プレスリリース要約
静岡大学などの共同研究グループは、ゲノム編集技術を用いて主要な切り花であるトルコギキョウの草姿改変に成功しました。植物ホルモンの働きを制御することで、コンパクトでボリュームのある鉢花・花壇花向けの新商材開発が可能となり、花き産業における新たな市場開拓や遺伝資源の創出として注目を集めています。
静岡大学農学部の中塚貴司教授らの研究グループは、徳島大学や東京科学大学、農研機構、株式会社ミヨシと共同で、ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」を用いてトルコギキョウの遺伝子改変を行いました。ターゲットとなったのは、枝分かれを抑制する植物ホルモンであるストリゴラクトンの生合成に関わる「CCD8」遺伝子です。この遺伝子をノックアウトした結果、野生型と比較して草丈が40%短縮し、分枝数が4.5倍に増加。さらに1株あたりの花数が1.7倍に増え、開花期間も延長されるという、鉢花や花壇花に適したコンパクトでボリュームのある草姿を実現しました。
トルコギキョウは国内産出額が133億円に上る主要な切り花ですが、これまでは主茎が伸びる性質から鉢物用の品種は極めて限られていました。今回の研究では、外来遺伝子を持たない「ヌルセグリガント」と呼ばれる個体の獲得にも成功しています。これは遺伝子組換え生物の規制対象外となるため、実用的な品種開発への移行がスムーズである点が大きな特徴です。今後は多様な花色や花型を持つ系統への応用が進められ、花き業界における新たな高付加価値商材としての展開が期待されています。

Journalポイント
実はこれ、単に花を小さくするだけでなく、植物の性質をコントロールして新しい市場を創り出す、ビジネス的にも非常に面白いアプローチなんです。
え、遺伝子を少し操作するだけで、これまでの花の形をそんなに都合よく劇的に変えることができるものなんですか?
そうなんです。植物には枝分かれを抑えるストリゴラクトンというホルモンがあり、今回のゲノム編集でその働きをピンポイントで抑えることで、草丈が低く、かつ枝や花が格段に多いボリュームある姿に変えることができました。
なるほど。でも、ゲノム編集って遺伝子組換え食品みたいに、規制が厳しくて実用化は難しいんじゃないですか?
そこが今回の最大の強みです。研究グループは、外来遺伝子が一切残っていないヌルセグリガントという個体の獲得に成功しました。これにより、遺伝子組換えの厳しい規制を受けずに、一般的な育種と同じ扱いで迅速に商業化できるんです。
そのヌルセグリガントというのはどういう意味ですか?外来遺伝子がないなら、自然な突然変異と同じ扱いになるんでしょうか?
ヌルセグリガントというのは、ゲノム編集の道具を一度導入した後に交配を行い、狙った変異だけを残して外来遺伝子を完全に無くした個体のことです。科学的には自然の突然変異と区別がつかないため、適切な手続きを経れば非遺伝子組換えとして扱われ、実用化のハードルが劇的に下がります。
それはビジネスの展開スピードが格段に上がりそうですね!他の花や身近な農作物でも、似たような取り組みはあるんですか?
はい、農林水産分野ではゲノム編集技術の社会実装がすでに始まっています。例えば、血圧低下作用のある成分を増やしたトマトや、肉厚な真鯛などがすでに市場に登場しており、今後さらに多様な品種が開発されると見られています。
最先端のバイオ技術が、これからの農業や花きビジネスのあり方を大きくアップデートしていくのですね。とても勉強になりました!


