プレスリリース要約
千葉大学の顧文超特任准教授らの研究チームは、MRI画像から再発リスクの高い難治性の大腸がんを、手術前にAIで高精度に見抜く新技術を開発しました。これまで高額な遺伝子解析などが必要だった「予後不良タイプ」の判定が、一般的な画像診断のみで可能になり、医療コスト削減と個別化治療の進展に貢献すると期待されます。
千葉大学大学院医学研究院の顧文超特任准教授と中国・復旦大学の共同研究チームは、大腸がんの中でも特に治療が難しく再発しやすい「CMS4」と呼ばれる予後不良タイプを、手術前のMRI画像からAIを用いて高精度に識別する技術「MRC4s」を開発しました。3つの医療機関から得られた大腸がん患者253人のデータを用いて検証したところ、内部検証でAUC 0.85、外部検証でAUC 0.84という高い精度を達成。これは、ResNet50などの代表的なディープラーニングモデルによる精度(AUC 0.70〜0.75)を大きく上回る成果です。
大腸がんの「CMS4」タイプは、化学療法や免疫療法が効きにくく最も予後が悪いとされていますが、これまでは手術で切除した組織を使い、高コストな遺伝子発現解析や免疫染色を行うことでしか判定できませんでした。今回開発されたAIモデルは、一般的なMRI検査で撮影される「T2強調画像」と「造影T1強調画像」の2つを組み合わせることで、がん組織の微細な特徴を捉えることに成功しました。これにより、患者の身体的負担を増やすことなく、かつ大幅に医療コストを抑えた形での術前診断が可能になります。

Journalポイント
実はこれ、日常的に使われているMRI画像から、がんの遺伝子レベルの性質をAIが読み解くことができる技術なんです。
え、画像を見るだけでそんなことまでわかるんですか? AIの進化は本当に凄まじいですね。
AIというのは人工知能のことで、コンピュータが大量のデータからパターンを学習し判断する技術です。実は今、がん治療では一人ひとりに合わせた「個別化医療」が重視されていますが、そのための遺伝子解析は費用も時間もかかるという課題がありました。
お医者さんが画像を目で見て判断することはできなかったのですか?
医師の目でもがんの有無や大きさはわかりますが、細胞の性質や遺伝子レベルの特徴までは見抜けません。今回の技術では、がん組織の微細な特徴を捉える2種類のMRI画像をAIに掛け合わせることで、難治性のタイプを高精度に見分けることに成功しました。
なるほど。画像の中に、人間の目には見えない「がんのサイン」が隠されているということですね。
その通りです。このAIは、複数の病院の患者データを用いた検証でも約85%という高い精度を達成しており、学術的にも非常に信頼性が高いと評価されています。
精度がそれだけ高いと、実際の治療の現場でもすぐに役立ちそうですね。
はい。実際にこのAIが「予後不良」と判定した患者さんは、そうでない患者さんに比べて再発リスクが約6倍も高いことがデータで示されています。つまり、手術前からより慎重で効果的な治療計画を立てられるようになるんです。
手術の前にそれが分かれば、無駄な治療を避けたり、より効果的な薬を最初から選んだりできますね。
まさにそこが最大のメリットです。患者さんの身体的な負担を減らせるだけでなく、高額な遺伝子検査を減らすことで医療コストの大幅な削減にもつながると期待されています。
医療費の削減は社会的な課題でもありますから、国や病院にとってもメリットが大きいですね。
その通りです。さらに今回のAIは「なぜその判定を下したのか」という根拠を可視化できる仕組みも備えており、医師が安心して診断のサポートに使えるよう設計されています。
AIのブラックボックス問題を解消しているのですね。他のがんへの応用も可能なのでしょうか?
応用は大いに期待できます。基本となる技術は、画像データと病理データを結びつける「ラジオミクス」という手法なので、他のがん種の診断にも展開できる可能性を秘めています。
医療AIの分野は、ビジネスとしても世界的に大きな市場になりそうですね。
はい。医療AI市場は急速に拡大しており、特に画像診断支援は最も実用化が進む領域です。今後は製薬企業との連携による、新薬の効果予測ツールとしての活用なども視野に入ってきます。
診断だけでなく、創薬や治療法の選択までシームレスにつながっていくのですね。
その通りです。今後は複数の病院と共同で臨床現場での実証実験を進め、実際の医療現場への早期導入を目指していくとのことです。
テクノロジーが人の命を救い、医療のあり方を変えていく素晴らしい事例ですね。勉強になりました!

